単一事業の会社を避ける理由【リスク分散の重要性】
こんにちは!今日は、銘柄選びで見落としがちだけれど、
とても重要な視点についてお話しします。
「その会社、一つの事業だけで成り立っていませんか?」
株研メソッドでは、
基本的に単一事業の会社は避けることを推奨しています。
なぜなのか?
今日は、実際の失敗例を交えながら、
その理由を徹底的に解説します。
単一事業の会社とは?
定義
単一事業の会社: 売上の大部分(70%以上)を、
一つの事業または一つの商品・サービスに依存している会社
例:
- ある特定のゲームアプリだけで稼いでいる会社
- 一つの薬剤だけを製造・販売している製薬会社
- 特定の部品だけを製造している部品メーカー
- 一つのサービスだけを提供しているIT企業
多角化している会社との違い
単一事業の会社:
売上構成:
事業A:90%
その他:10%
多角化している会社:
売上構成:
事業A:40%
事業B:30%
事業C:20%
その他:10%
判別方法
決算短信や有価証券報告書を見る
確認箇所: 「セグメント情報」または「事業の状況」
例:
【セグメント別売上高】
クラウドサービス事業:15億円(75%)
コンサルティング事業:3億円(15%)
その他:2億円(10%)
→ クラウドサービス事業が75%
→ 単一事業に近い
単一事業の会社を避ける7つの理由
理由1:一つの失敗で終わる
単一事業の最大のリスク
その一つの事業がダメになったら、会社全体が終わります。
実例1:U社(ゲームアプリ会社)
2018年の状況:
- 主力ゲームアプリ「〇〇クエスト」
- 売上の95%を依存
- 株価:1,500円
好調時:
- ユーザー数:500万人
- 月商:5億円
- 営業利益率:40%
2019年、事件が起きる:
- 競合の新ゲームが大ヒット
- ユーザーが流出
- ユーザー数:500万人 → 200万人
- 月商:5億円 → 2億円
会社の対応:
- 他にヒットゲームがない
- 新ゲーム開発も失敗
- 打つ手なし
結果:
2018年:株価1,500円
2019年:株価600円(-60%)
2020年:株価300円(-80%)
2021年:上場廃止
もし多角化していたら:
- ゲームAがダメでも、ゲームB、Cがある
- 別事業(音楽配信など)もある
- 会社全体は生き残れる
理由2:市場環境の変化に弱い
一つの市場だけに依存すると、その市場が縮小したら終わり
実例2:V社(DVDレンタル事業)
2010年頃:
- 事業:DVDレンタルチェーン
- 店舗数:全国200店舗
- 売上の100%がDVDレンタル
- 株価:800円
市場環境の変化:
- 動画配信サービス(Netflix、Amazonプライムなど)の台頭
- DVD市場が急速に縮小
V社の売上推移:
2010年:売上200億円
2012年:売上150億円(-25%)
2014年:売上100億円(-50%)
2016年:売上50億円(-75%)
会社の対応:
- DVDレンタル以外の事業なし
- 動画配信への参入は遅れた
- 他社に太刀打ちできず
結果:
2010年:株価800円
2016年:株価150円(-81%)
2020年:倒産
もし多角化していたら:
- DVDレンタル以外に、カフェ事業
- 書籍販売
- イベントスペース運営 など、他の収益源があれば生き残れた
理由3:規制変更のリスク
一つの事業だけだと、規制変更で一気に終わる
実例3:W社(貸金業)
2005年頃:
- 事業:消費者金融(貸金業)一本
- 売上の100%が貸金業
- 株価:3,000円
- 高収益で絶好調
2006年、規制変更:
- 貸金業法改正
- グレーゾーン金利の廃止
- 上限金利の引き下げ
- 総量規制の導入
W社への影響:
- 金利収入が激減
- 過払い金返還請求が殺到
- 新規貸付も減少
結果:
2005年:株価3,000円、営業利益100億円
2007年:株価1,200円(-60%)、営業利益20億円
2010年:株価300円(-90%)、赤字50億円
2012年:他社に吸収合併
もし多角化していたら:
- 貸金業以外に、保証事業
- 不動産事業
- クレジットカード事業 など、他の収益源で損失をカバーできた
理由4:技術革新で一気に陳腐化
技術が進歩すると、その事業自体が不要になる
実例4:X社(デジタルカメラ部品メーカー)
2008年頃:
- 事業:デジタルカメラ用CCDセンサー製造
- 売上の85%がCCDセンサー
- 株価:1,200円
技術革新:
- CMOSセンサーの性能向上
- スマートフォンの普及
- デジタルカメラ市場の縮小
X社の売上推移:
2008年:売上150億円
2010年:売上120億円(-20%)
2012年:売上80億円(-47%)
2015年:売上40億円(-73%)
会社の対応:
- CMOS技術への転換が遅れた
- スマホ市場への参入も失敗
- 他の事業がない
結果:
2008年:株価1,200円
2015年:株価200円(-83%)
2018年:廃業
理由5:取引先への依存リスク
単一事業の会社は、特定の取引先に依存しがち
実例5:Y社(自動車部品メーカー)
2019年頃:
- 事業:自動車用エンジン部品製造
- 売上の80%が特定自動車メーカーZ社向け
- 株価:600円
2020年、Z社の方針転換:
- Z社がEV(電気自動車)へシフト
- エンジン車の生産を大幅削減
- Y社への発注が激減
Y社への影響:
2019年:売上100億円
2020年:売上60億円(-40%)
2021年:売上40億円(-60%)
会社の対応:
- エンジン部品以外の技術なし
- EV部品への転換は困難
- 他の自動車メーカーとの取引もない
結果:
2019年:株価600円
2021年:株価150円(-75%)
もし多角化していたら:
- 複数の自動車メーカーと取引
- 自動車以外(産業機械など)にも部品供給
- EV部品への転換も進める
理由6:季節変動や景気変動の影響が大きい
単一事業だと、変動をカバーできない
実例6:AA社(エアコンメーカー)
事業構成:
- 売上の90%が家庭用エアコン
- その他10%
問題点:
- 夏季に売上集中
- 冷夏だと売上激減
- 冬季は閑散期
2019年の冷夏:
- 平均気温が例年より2度低い
- エアコン需要が30%減
- AA社の売上:前年比-35%
株価の動き:
2019年5月:800円
2019年8月:500円(-37.5%)
もし多角化していたら:
- エアコン以外に、空気清浄機
- 暖房機器
- 産業用空調システム
- 季節変動を平準化できる
理由7:ブームが去ったら終わり
一時的なブームに乗った単一事業は危険
実例7:BB社(タピオカドリンクチェーン)
2018年、タピオカブーム:
- 事業:タピオカドリンク専門店チェーン
- 店舗数:全国50店舗
- 売上の100%がタピオカドリンク
- 株価:1,000円(上場直後)
2019年、ブームのピーク:
- 店舗数:100店舗に拡大
- 行列ができる人気
- 株価:1,500円(+50%)
2020年、ブームの終焉:
- 飽きられる
- コロナ禍で外出減
- 来客数が激減
BB社の状況:
2019年:月商5億円
2020年:月商2億円(-60%)
2021年:月商1億円(-80%)
会社の対応:
- タピオカ以外のメニューがない
- 他の業態への転換も困難
- 店舗の閉鎖が相次ぐ
結果:
2019年:株価1,500円
2020年:株価400円(-73%)
2021年:株価100円(-93%)
2022年:上場廃止
多角化している会社のメリット
では、多角化している会社には、どんなメリットがあるのでしょうか?
メリット1:リスク分散
一つの事業がダメでも、他がカバー
例:CC社(総合電機メーカー)
事業構成:
家電事業:30%
住宅設備事業:25%
車載機器事業:20%
産業機器事業:15%
その他:10%
2020年、コロナ禍:
- 家電事業:+10%(巣ごもり需要)
- 住宅設備事業:-15%(新築減少)
- 車載機器事業:-20%(自動車生産減)
- 産業機器事業:-5%
トータル:-5%程度の減少
もし単一事業(車載機器のみ)だったら: -20%の大幅減少
メリット2:成長機会の多様化
複数の成長エンジン
例:DD社(IT企業)
事業構成:
クラウドサービス:40%(成長率+30%)
コンサルティング:30%(成長率+10%)
システム開発:20%(成長率+5%)
その他:10%
クラウドサービスが急成長:
- 会社全体の成長率:+18%
もし単一事業(システム開発のみ)だったら:
- 成長率:+5%のみ
メリット3:シナジー効果
事業間の相乗効果
例:EE社(総合小売)
事業:
スーパーマーケット
コンビニ
ネット通販
金融サービス(クレジットカード)
シナジー:
- スーパーの顧客が、ネット通販も利用
- クレジットカードのポイントで買い物
- データを共有し、マーケティングに活用
相乗効果で、全体の利益率UP
メリット4:景気変動への耐性
景気が良い時と悪い時で、バランス
例:FF社(商社)
事業:
資源・エネルギー:好景気に強い
食品:景気に左右されにくい
医療・ヘルスケア:不況に強い
IT・通信:成長産業
不況時:
- 資源・エネルギー:-30%
- 食品:-5%
- 医療・ヘルスケア:+5%
- IT・通信:+10%
トータル:-5%程度
景気の波を平準化できる
単一事業でも許容できる3つの条件
ただし、単一事業でも、以下の条件を満たせば、投資対象になり得ます。
条件1:圧倒的なシェアと参入障壁
市場を独占している
例:
- Google(検索エンジン)
- Microsoft(OS)
- Amazon(クラウド)
特徴:
- 市場シェア50%以上
- 他社が参入できない技術・ブランド
- ネットワーク効果がある
この場合は、単一事業でもOK
条件2:市場が拡大し続けている
市場自体が成長している
例:
- AI技術
- 再生可能エネルギー
- ヘルスケア
特徴:
- 市場規模が年率10%以上で成長
- 今後10年は成長が続く見込み
- 新規参入はあっても、市場全体が拡大
この場合も、単一事業でOK
条件3:黒字化していて、財務が健全
すでに利益を出している
特徴:
- 営業利益率10%以上
- 自己資本比率50%以上
- 現金を潤沢に持っている
理由:
- 単一事業でも、財務が健全なら、新規事業への投資ができる
- 急激な環境変化にも耐えられる
銘柄選びでのチェックポイント
では、実際に銘柄を選ぶ時、どうチェックすればいいのでしょうか?
チェック1:セグメント情報を確認
決算短信や有価証券報告書を見る
確認箇所: 「セグメント別の売上高・利益」
判断基準:
一つのセグメントが70%以上:単一事業(要注意)
最大セグメントが50%以下:多角化(Good)
チェック2:主要顧客を確認
特定の顧客に依存していないか
有価証券報告書の「主要な販売先」を確認
判断基準:
一つの顧客が50%以上:依存度高(要注意)
上位5社で50%以下:分散(Good)
チェック3:新規事業の有無
会社が新しい事業を育てているか
確認方法:
- 決算説明資料
- 中期経営計画
- IRニュース
判断基準:
- 新規事業への投資あり:Good
- 既存事業のみ:要注意
チェック4:市場の成長性
その事業の市場は、成長しているか
確認方法:
- 業界レポート
- ニュース記事
- 政府統計
判断基準:
- 市場成長率+5%以上:Good
- 市場成長率0%以下:要注意
よくある質問
Q1:多角化しすぎている会社も危険?
A:はい、「何でも屋」も問題です。
理由:
- 経営資源が分散
- どの事業も中途半端
- 専門性が低い
理想的なバランス:
- 2〜4事業程度
- それぞれが10%以上のシェア
- シナジー効果がある
Q2:スタートアップは単一事業が普通では?
A:はい、上場直後は単一事業が多いです。
対処法:
- 上場3年以内は様子見
- 2つ目の事業が育つまで待つ
- または、圧倒的な技術・シェアがあるか確認
Q3:「その他」が多い会社は?
A:内容を確認してください。
良い「その他」:
- 複数の小規模事業の合計
- 新規事業の萌芽が含まれる
悪い「その他」:
- 不採算事業の寄せ集め
- 何をやっているか不明
Q4:単一事業の会社を全部避けるべき?
A:いいえ、条件次第です。
避けるべき単一事業:
- 市場が縮小している
- 競合が多い
- 参入障壁が低い
- 財務が弱い
投資してもいい単一事業:
- 圧倒的なシェア
- 市場が拡大中
- 参入障壁が高い
- 財務が健全
まとめ:分散はリスク管理の基本
今日の重要ポイント
- 単一事業の会社は避ける
- 一つの失敗で終わる
- 市場環境の変化に弱い
- 規制変更、技術革新、取引先依存のリスク
- 7つの実例
- U社:ゲーム一本で破綻
- V社:DVDレンタル市場縮小で倒産
- W社:規制変更で消滅
- X社:技術革新で陳腐化
- Y社:取引先依存で大打撃
- AA社:季節変動で不安定
- BB社:ブーム終了で上場廃止
- 多角化のメリット
- リスク分散
- 成長機会の多様化
- シナジー効果
- 景気変動への耐性
- 単一事業でもOKな条件
- 圧倒的なシェアと参入障壁
- 市場が拡大し続けている
- 黒字化していて財務が健全
- チェックポイント
- セグメント情報
- 主要顧客
- 新規事業の有無
- 市場の成長性
実践のためのチェックリスト
銘柄を選ぶ前に確認:
□ セグメント情報を確認した?
□ 一つの事業が70%以上ではない?
□ 特定の顧客に50%以上依存していない?
□ 新規事業を育てている?
□ 市場は成長している?
□ 財務は健全?
□ もし単一事業なら、3つの条件を満たす?
全てYes → 投資OK
最後に:卵を一つのカゴに盛るな
投資の格言に、こんな言葉があります。
「卵を一つのカゴに盛るな」
意味:
- 全ての卵を一つのカゴに入れると
- カゴを落とした時、全部割れる
- 複数のカゴに分ければ、リスク分散
これは、会社経営にも当てはまります。
一つの事業だけの会社 = 卵を一つのカゴに盛っている
その事業がダメになったら、全てが終わる。
だから、私たちは多角化している会社を選ぶ。
リスクを分散し、安全に、着実に資産を増やす。
それが、株研メソッドの考え方です。
今日のポイント:
- 単一事業の会社は基本的に避ける
- 一つの失敗で会社全体が終わるリスク
- 7つの実例で危険性を証明
- 多角化でリスク分散、成長機会の多様化
- 単一事業でもOKな3つの条件あり
- セグメント情報を必ず確認
- 「卵を一つのカゴに盛るな」

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